★1★ 求めていたシェルティー
我家で生まれその一生をともに過ごすと決めた大切な娘のレイン。レインが生まれたときわたしは失意のどん底にいた。大事な愛ちゃんを自分の不注意で失ったストレスが大きすぎていろんなことの記憶が残っていない。可愛かった幼い日のレインの写真すら数えるほどしか残っていないのが現実だ。レインの記憶がはっきりと残り始めたのはある事件が合ってからだ。それまでのことはポツリポツリとしか思い出せない事が今となってはすごく悔しいことになっている。
MARINの二回目の出産で帝王切開にもならずみんなのいる前で昼に生まれてきたのがレインだ。この日、MARINは3頭の子犬を産んだ。ブルーマールの素晴らしく綺麗な男の子と、少し小さめのトライの男の子と最後に『BLUEの女の仔にしてよ!』という半ば叫びに近い私の話を聞いてくれたかのように生れ落ちてきたのがレインだった。
綺麗なブルーマールのMARINの娘が欲しいという願いを100%満たして生まれてきたのがレインだ。初めて、ごくごく普通のお産を経験した。こんなに簡単で問題のない楽なものがお産にはあるのだと知ったのはこのときからである。レインはMARINのおっぱいをたくさん飲んですくすくと育っていたように思う。ある程度の大きさになったころ、もしかしてサイズが出ちゃうんじゃないのかなと悩むようになった。
それほどレインはしっかりとした犬だった。
小さいうちからしゃんと形よく立っているし、よく話を聞くMARINに特別似ていると感じた部分は中身よりは骨格構成でMARINの直したい部分を完璧に治った状態の形だった。周りの評価はレインよりも男の子のマルスの方がよく、それはほとんど同じ形質で生まれているのにマルスの方がレインよりも一回り小さいからだったんじゃないかと思っている。
ダッシュが我家の大事な仔になりつつある時期に次に残す子はBLUEの女の子と決めていた。周りの評価を聞く中で大きな子を残してもねと何度も言われたがMARINがこの後お産するかも考えていなかったし、前回がトライの男の子(シーマ)だけだったせいで、レインをおかないという決断は出来ないまま時が過ぎた。
成長するにつれレインはマルスよりも大きくならなくなり確かに通常の子犬に比べたらはるかに大きいと感じさせたがもって生まれたものが私にとっては理想的なものだったのでショーにChallengeもしてみた。
シェルティーの神様とあがめている人にも見せた折、サイズ内のうちに一杯遊んだらいい思いが出来る犬だといわれマナーを入れて4ヶ月の声を聞くと同時に出陳し初出陳でベビーのリザーブQUEENをもらってきた。次の日はマルスも出したのでレインに勝負をかけたくて友人に引いてもらったが結果はエクセレントで終った。2頭出してマルスもエクセレントだったので気持ちよくショー会場を後にしたがこの日に子犬だったノンちゃんの怪我が下でショーに行く機会から遠ざかってしまう中サイズがでたのでショーは断念することになった。最初から解っていたこととはいえサイズの問題はその後も出産のたびに大きく私の中にトラウマとなってしまうがレインからいつか自分にとってのスーパードッグが必ず生まれると信じたのはこの時期だったように思う。
レインが生まれた次の年の春、レインには不幸な事件が起こった。当時家の改築をしていて住みながらの工事だった。出入りする大工さんや工務店の人の中に私が留守にしている間に入らないでと言っておいた犬たちがいる部屋に無断で入ろうとした輩がいて(今思えば犬たちを触ってみたくてドアを開けたのだろうが)『お留守番をしていてね』と言われていた犬たちは見知らぬ人の部屋への進入に大騒ぎをしたらしい。
帰ってきた時には上目遣いで警戒感丸出しの犬たちとへらへら笑いながら『うっかり開けたらあの白い犬に僕噛まれましたよ!』と言いつけに来る若い衆がいて状況的に尋常じゃない事が起きたなと理解できた。
『噛まれた』といわれた以上どこを?と聞くのが普通だ。でもここですよと差し出された腕にかかる服をどけてもミミズバレ一つなく、言って来た人の体のどこにも打撲の後さえなかった。まったく傷はないのにやたらに噛んだ噛んだといいまくるので頭に来たわたしは『勝手に入るなと言ってある部屋に入ろうとすればうちの犬は攻撃しても仕方がない。噛んだら申し訳ないと謝ろうと思ったけれど傷一つないうえにあなたは犬が悪いと言っているけど自分のやった行為は悪かったとはいわないのか?』と詰め寄った。
しぶとく『噛まれましたよ』と言い張るのが頭に来て速攻で工務店の社長に電話して二度と越させるなと文句をぶちまけた。そのときには気が付かなかったが時間が立つに連れて飛びついたのはレインであり、そのときにこっぴどくその人に何かをされたのだと解った。レインは工事が進み始めると人の出入りが頻繁になるに従い、問題の人と同じカッコウをした人が様々に起こす音に対しての極端な警戒と攻撃性を表し始めたからだ。着ている服装が違えば反応しないのに、同じ会社だから同じ制服で来るわけで、問題の人物ではなくても反応が異常じゃないの?と思うように変化していった。
他の犬たちにも動揺は見られたがレインのような反応は他にはなかった。
最初は何がなんだかわからずにどうして穏やかだった子がこんなに激しく人に向って吠えたりするのか理解に苦しんだ。人が好きだったのに特に若い男の人を見ると急に嫌な表情になり特に工事できている人には一切油断はしませんといったふうになりピリピリと様子を伺うようになっていった。散歩に出ればかなづちの木を叩く音がしたと言っては震えながら吠えまくるのをどうしたら今の現状をレインにとってその音がしても問題は起きないのだと認識させればいいか試行錯誤の日々が始まったのだ。同じ工事の音でも電機のこぎりの音やエアーコンプレッサや自動釘打ち機の音にはまったく反応しない。。。でも手動で叩くかなづちの音には異常に反応するのだ。
まさかね・・・かなづちで叩こうとしたりはしていないよね・・・そんな不安はいつしかきっとレインは飛びついた後、そうされそうになったか、かろうじて体を交わして難を逃れたのだろうという確信に変っていった。思い返してみればこのときまで何も問題らしきものに遭遇せずにこのトラウマさえなかったらレインは穏やかな優しい犬に成長していたはずだった。でもこの事があったからこそ愛ちゃんを亡くし腑抜けのようになっていた私が真面目に現状を打開しなくてはならないとレインに関わり始めたのも事実だったと思う。
レインの為に使った時間は忙しかったあの当時を思い出せば膨大な時間だった。でも、無理くり作った時間の中に少しづつ変化は現れて、結局工事も終わり誰も来なくなる時期にはレインは若い男の人がそばに来ても平然とするようになり穏やかさを取り戻せるまでに人の言葉を聞く耳も戻ったが音響シャイと呼ばれるようなごく一部の音だけには今でも極端な反応を消すことは出来ないでいる。そんなレインが不憫で私のせいだと自分をせめても何も変りはしないのだからせめてレインいは楽しみを探してやらないとと考えていた。
もって生まれたものとは違う作られてしまった性格は変えられないのかとずいぶん悩んだ時期、お産をすると変るよという話を聞いて二回目のヒートを待ってお産に望んだ。
そのときに生まれたのがシークである。最初のうちこそ子育てするので変るかなと思ったレインはまったく何も変らずヤンママそのもので子育てさえ私に任せるようだった(笑)
次もレインの子がほしいと言われるようにレインの子はみんな穏やかで本来の彼女そのものを受け継いでくれていた。
唯一つサイズが大きかったことを除けば(苦笑)
当時はDISCをやっているわけでもなくキャンプ三昧をしながら訓練を少し遊びでしていた時期で愛ちゃんを失うというアクシデントがあったせいでショーにおいても本人が駄目ならとりあえず次世代をと考えていたし、トラウマ事件も重なって繁殖に踏み切った。
自分の予想に反してサイズのおおきな子が生まれ二回目はサイズに収まるかと思ったが
同じ組み合わせでやはり成長の途中でオーバーしてしまったので
お産を切り上げてレイン本人と何かをやって
楽しむことに専念しようと
当時やりはじめた
DISCの世界にレインは
登場することになる。
私の大事な宝物の
ファンタを生むその日まで
レインはスポーツDogとして
息子のYUUKIの大切なパートナーとして花が開き始めるのだ。