シェルティーにはスタンダードで決められた毛色のほかに、意図しなくても生まれてきてしまう毛色があります。スタンダードに沿ってブリーディングしてきた多くのブリーダーたちはその変った毛色の存続を許さず、繁殖のラインから外す努力を続けてきました。ですからシェルティーでは意図的に変わった毛色を出すブリーダーは今のところほとんどいません。
シェルティーも犬であるので祖先から受け継いできてしまった毛色の遺伝子があります。また無知なことから本来はしてはならないと思われる毛色の組み合わせによって出現させてしまう毛色もあります。ここではどんな毛色が出てしまうのかだけを書いておきます。なぜ出てくるかについては毛色の遺伝子のページを参照してください。
- ダブルマール・ホワイトマール・homozygous merle(体のほとんどが白いもの)
- ブリンドル・虎毛 (甲斐犬のような虎縞模様が出る柄)
- セーブルマール(セーブルの色がマーリングしたもの)
- レバー・チョコレート(体の色および、目、鼻、口などがレバー(肝臓)色・チョコレート色のもの)
- マルチーズブルー(体の黒い色の部分・眼、鼻、口が消し炭色(グレイ)のトライおよびバイブラック)
- スレートマール(マールの斑紋の黒・眼、鼻、口が消し炭色(グレイ)のブルーマールおよびバイブルー)
- カラーヘッド(頭部に明確な色があり、体表面の多くが白。ダブルマールではないもの。)
- ミスカラー(ボディーに明らかな白斑のあるもの)
- クリプティックブルー(ブルーマール色の体の色の部分がほぼ黒になってしまうもの)
※クリプティックブルーについてはブルーマールであり、柄の問題という認識のため、スタンダードカラーに準じてドッグショー等でもまだ認められているようです。つまり毛色よりも他の部分のほうがより素晴らしいと評価されれば毛色がスタンダード色の犬がいてもショーで勝てるということです。
JKCスタンダード10版では大きな黒の斑紋は極めて好ましく無いとされているので、本来であれば、あせた色であるマルチーズブルーやスレートマールに準じると考えるべきでしょう。しかし柄の問題と色の遺伝子の問題はまた別ですし、次の世代がすべてクリプティックにならないことからほかの部分の優劣で勝敗が決まるのかもしれません。スタンダードの中に多少の矛盾があるように感じられないこともありません。
スタンダードで決めた毛色の理由が明らかになる日があれば矛盾もなくなるのでしょう。私は審査員ではないので個人的な解釈としてご理解ください。
上記に掲載した毛色は繁殖する人がほんの少し気をつければ避けられる毛色ばかりです。特に体に問題の起きるダブルマールは、マールの遺伝子を持つ者同士の組み合わせさえしなければ産まれてくる毛色ではありません。命をもって生まれてくる仔犬たちの幸せのためにも、繁殖に携わる人は知っておかなければなりません。
赤で示したダブルマール・青で示したセーブルマールとブリンドルはJKCでは血統証に×印を付けるようになっています。カラーヘッドやミスカラーについては通常登録はその犬の体表の毛色で登録され、血統証上ではカラーヘッドやミスカラーはわかりません。
マルチーズブルー・スレートマールはくすんだ黒として認識されるだけで血統証上はトライおよびブルーマールとして登録されているでしょう。レバーはおおよそセーブルとして登録されているだろうと推測します。
ダブルマール以外の毛色の個体は障害をもって生まれてくる等の問題は無いとされていますが「グレーコリー症候群」と言われる病気の犬の場合、見た目の毛色の状況からDの遺伝子の表現個体に多く疾患が現れるように見えます。常染色体劣性遺伝の遺伝疾患であると言われる背景に、毛色の遺伝自体がDの場合常染色体劣性遺伝なので同一遺伝子上に病気の遺伝子の存在があるのかもしれません。
犬種基準にない毛色の場合、継続する意味が見つからない以上あえて出現させる必要はないでしょう。また、掲載した毛色の多くには色を退色させる遺伝子のかかわりがあり、現在ではそのことでの問題がどのようにかかわっているのかが解明され切っていません。退色の遺伝子は数代続ければ生まれてくる仔犬に不幸な結果をもたらすことが解っていることくらいで、遺伝疾患との関わり合いなども解明されていません。
別の犬種ではスタンダードとして認められているものもあり、固定された毛色もあります。シェルティーにはなぜ認められなくなった毛色なのかを調べていくのは楽しくもあり難しくもあります。犬の毛色遺伝子のことは不思議なことばかりです。
※存在する毛色を紹介していますが、スタンダード(犬種基準)に於いて認められていない毛色の普及を推奨している訳ではありません。シェルティーはシェルティーである前に犬であり、犬として持ち合わせるであろう毛色の遺伝としての説明です。しかし命の重さはどの犬にも平等であると信じていることをお断りしておきます。。。
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