MAGIC WORLD - MY DOG
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★ 4 ★初めての負け


神奈川インターの日、この日はマリンには初めてのインドアのショーでした。盛り上がるだけ盛り上がった私達は、今日もまた何か賞がもらえるわと有頂天になっていました。確かにマリンは最初は張り切って会場を楽しげに歩いてうきうきしていましたから、会場の雰囲気に飲まれたわけではないことは確かだったのです。


早速皆さんにご挨拶をし、ハンドラーさんの元にマリンを連れて行きました。この日はなぜか、いやいやをしながら、私たちが戻るほうをずっとマリンは見ていました。いつものように綺麗になったマリンがショーリンクに入ってくると相手が出てきません。聞けば棄権したとか・・・・


まぁいいやとウイナーズ戦で勝てばポイントがもらえるんだしと思ってマリンを見るともうあのこは顔が違っていました。ハンドラーさんの指示を無視し体ごと突っ張っているのです。いつもどんなことにも素直なマリンがはじめて見せた抵抗でした。ラウンドは何とか走りましたがまったくステイが利きません。ハンドラーさんが直しても直しても変な足の位置のまた戻してしまいます。目はあらぬ方向を見て・・・そのうちについには体重を完全に体の後ろにかけて、へっぴり腰の姿勢で前足を大きく横に出した姿勢になってしまい、どう見てもショードッグには程遠い形にしか立たないのです。


きっとハンドラーさんは冷や汗を掻いたと思います。見ている私達はマリンと目が合いました。マリンは
『今日は絶対に反抗してやる!』と言ってるように見えました。当然ウイナーズ戦で負けました。





帰ってくるマリンを迎えにいくと当然の事ながら、『預けてくれれば何とか出来るんだけど・・・』と言われました。それは、リンクの外で見ていた私たちにはわかりきった提案でした。本来ならハンドラーとうまく折り合いをつけるためにせめて1週間とか数日前からとか預けるのが本来です。良い犬になればショーを走る間中ハンドラーのもとに預けておくものです。犬と人が共鳴し一番良い状況を引き出すために取らなければならないコミニュケーションは短い時間では難しいはずです。


私たちが自分たちの手元からマリンを離すことができない中を一番難しい方法で引いていただいているのですからそういう提案が出ないはずはないのです。それはマリンの良い部分を引き出すために他人がハンドリングするには必要なことでした。


ブリーダーさんも、いい犬なのになぁ・・・とつぶやきます。決して無理なことは言わないブリーダーさんです。でも私たちにはマリンが手元を離れることは考えられないことでした。そして何より一番それを知っているのはブリーダーさんでしたから・・・・それ以上は言いません。その日の足取りは重く、何よりもマリンの落胆した様子に私たちは打ちのめされていました。


マリンは知っていました。自分が悪いことしたのだと・・・私たちをがっかりさせたのは自分だという事を・・・・ただ私達は、マリンを引退させようとは思いませんでした。せっかくの犬なのに、どうしたら良いんだろう?預けるのは出来ない。これだけは天地がひっくり返っても自分たちのポリシーなのだから。。。ドッグショーもまだだしてみたい・・・・


そしてふと思いつきました。パパにも相談せずに私はハンドラーさんのところにつかつかと近寄り、。『先生。自分で引くのは駄目ですか?』あまりに唐突なその一言に一瞬ハンドラーさんは目が点になりましたが『そう簡単じゃないよ』と笑って答えました。『でもやってみたいならやってみるのもいいかもしれないね。解らないことがあれば、ブリーダーさんに聞いても僕に聞いてきてもいいし挑戦してみるのもいいことだよ。』そして、『チャンピオンになれない犬じゃないから、頑張ってみて駄目だったらまたいっしょにやりましょう。』と言ってくれました。





先生のこの言葉がなかったらマリンはチャンピオンにもならないままごくふつうの家庭犬として生涯をすごし、たぶん子犬も産まずにごくごくふつうに生涯を送っただろうと思います。そして私たち自身も、マリンを自分でハンドリングしようという決断から人生が大きく変わったのだと思います。シェルティーの世界ではナンバーワンと言われる人に出会った強運。そういう人との出会いを産んでくれたブリーダーを見つけた幸運。マリンは私たちの人生を変えるためにやってきた子だったと信じています。


根が単純な私は先生が半分慰めるために言われたこの言葉をそのままそっくり真に受けて、
マリンと組む事を決めたのです。


ハンドラーさんのその時の人を見切る鋭さに今更ながら敬服し、
とっさの心優しい言葉を本当に感謝しています。




実際は、こんなに大変だと最初から知っていたら、
きっとやろうとは思わなかったかもしれません(笑)
そしてその晩からハンドリングの特訓が始まりました。
vol.5へ続く…。








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