★1★ I am Therapy Dog !
デイジーはIwashimizuKennelから来た4頭目の子だ。初めてであったのはIwashimizuKennelの子犬の部屋だった。サークルの中に一頭だけでちょこんとお座りして、尻尾をパタパタ振っていた。3ヶ月を越えるくらいの毛吹きの良いお嬢さんといった感じの子だった。
『MAGICのためにとっておいたのよ(*^^)v』というおじさんとおばさんの有難い言葉を背中に背負ってデージーは我が家にやってきた。ところが、デージーは今まで来た子達とはまったく違いおろしたところから何時間も動かないで固まってしまうような子だった。声をかければパタパタと申し訳なさそうに尻尾を振りはするものの、近づいてくるわけでもなく、ほかの犬たちが匂いを嗅ぎに行ってもただじっとしているだけで動く気配すらなかった。
いろんな性格の犬を手がけていながらさすがに心配になって次の日にIwashimizuKennelに大丈夫ですかねぇ?と連絡したほどだった。
何が彼女のトラウマだったのか、いまだに確証は無いがわかっているのは女の人が怖いということだった。息子たちが声をかけ、パパが声をかけ、男の人なら大丈夫だということはわかった。人がだめなだけで犬には結構強く、いつしか仲間として溶け込んでいった。犬たちとは何とかうまくいったものの、相変わらずデイジーに対して何もしないのに私のことはとても怖いらしく、這い蹲るようにしてくるデイジーに、誰か良い人に飼ってもらったほうが良いのかもしれないと考えるようにすらなっていた。
時折来る私の両親にはデイジーは愛想がよく、中でも父にはべったりと張り付き、『何がそんなに良いのかねぇ?』と聞いてしまうくらい、食べ物をやるわけでもなく、なぜるわけでもないのに付きまとっていた。
ある日、友人が『トライの女の子を捜してるんだけどデイジーを私にくれない?』と連絡してきた。あまりに私を怖がるデイジーに悩んでいたのを友人も良く知っていたためのことだろう。ちょっとためらいはあったが、友人の家のほうがきっとお嬢様させてもらえるだろうし、いい話かもとも思った。
大きくなってしまった子を希望してくれる人は少ない。ましてや私のような飼い方で条件の厳しいところからはそうもらおうと思う人は少ないものだ(笑)あれはだめこれはだめって言うからね(笑)うちのダックスの子を連れて行っている関係もあり、デイジーはお迎えに来た友人に連れられていった。可愛がるから大丈夫よ〜!と明るく友人は手を振っていった。不安そうなデイジーを抱きしめて・・・
ところが、たまたまデイジーを渡したその日に父から電話が来たのだ。『また遊びに行くからな。デイジーは元気にしてるか?』そうだった・・父にデイジーはよくなついていて、父が来るとべったりと張り付いて離れなかったんだっけ・・・
まずいなぁと思いながら『ウ〜ン。。。デイジーねぇ、今日お友達の人がどうしても欲しいからって連れて行ったよ。』と、なんでもない風を装って内心どきどきしながら報告した。
絶句する父。。。
やばい。。。やばい。。。絶対やばい〜!!
父はとにかくおしゃべりな人である。彼が話の途中で絶句したことなど無いのだから。。。しばらくの沈黙の後、『何でほかの人になんかやっちゃったんだ!飼えないなら俺が飼うのに!!』とすごい勢いで怒り出し、もうこうなると手がつけられない。こんな年になってもまだまだ父は私にとってとても怖い存在なのだ。
でも・・・2頭も面倒見れるの?最近具合が悪くて出歩けないんじゃないの?病気がよくないって言ってたじゃない。何もする気が無いって毎日いらいらしてて、母とけんかばかりしてるじゃない。
何度も出かけた言葉の前に、父のワナワナとしているその怒りのすごさに私の疑問はすっかり縮み上がり『今すぐ友達に返してもらいに行って来るから。。。』と返事をすることしかできなかった。
ほうほうのていで父からの電話を切り、これまたどうするべきかと悩みながら友人に連絡をした。実はこの友人が実家のすぐ近くの家だったし父の状態を伝えると『返す返す(~_~;)』といってくれるような間柄だったので助かった(^^ゞとりあえず今から迎えに行くから勘弁してと速攻で迎えに行き、もうその足で実家にデイジーを連れて行こうと考えていた。。
知らない人の車に乗せられ、知らない家に連れて行かれ、いつも小さくなってたデイジーがなおさら小さくなって私を見上げる。あんなに怖がってた私の顔を見て尻尾さえ振ってくる。『ごめんねデイジー、おうちを間違えたんだよ。デイジーのおうちはもっと違ってたんだ。。。』そういってちいさな彼女を抱きしめた。
友人は苦笑いしながら、『まったくさぁ、お父さんじゃ仕方ないね。(~_~;)』とデイジーを返してくれた。早々に引き上げて実家までデイジーを連れて行く。恐る恐る鳴らす実家の呼び鈴。
『ほ〜い』聞き慣れた父の声。
まさか私がデイジーを連れて立ってるとは思いもしない父。。。玄関を開けると怒りで目をむき出したが私の横をするりと抜けて駆け寄る黒い塊を『帰ってきたかデイジー!かわいそうにかわいそうに』と抱きしめていた・・・
なんかなぁ・・・かわいそうって言われちゃうとなぁ・・・なんかすごくいけないことしたみたいな気がするけど、実際そうだったかしら?良い人なんだよ、私の友達だもん。デイジーが気持ちよく暮らしていけるんじゃないかと考えて決めたんだけどなぁと思いながら、デイジーの狂喜乱舞する姿を見て、おうちを間違えたんだねと納得している自分がいた。
この日からデイジーは父の犬になった。
父はデイジーのために外に出るようになった。なぜかデイジーは実家では外に行かないとトイレをしなくなった。それもある程度のj距離を歩き、決めた場所があるのだという。人様の家の前なんかでさせないでヨと思いながら、何故うちでは今でも室内トイレでちゃんとできるのに、実家では外にいくのだろうと考える。
たぶん都合よく考えれば、デイジーなりに父を外に連れ出す口実なのかもしれないなぁなんて勝手に想像したりもする。車が乗れなくなるとデイジーをつれて出かけられないからとあれほど嫌がっていた目の手術も受け、毎晩デイジーを抱いて寝る。デイジーもちゃっかりしているというか、実家にいってからはすっかり明るくなり、ベンを従えて何でも自分が一番で、大きな顔をして最初からいるみたいなのよと母を苦笑いさせている。毎日おやつをもらって、近所の人たちが遊びに着て・・・デイジーのためにはよい馴致だのだろうか?
父はデイジーが着てからというもの、だいぶ元気になり、車も乗れるようになり、デイジーをつれていろんなところへ出かけるようになった。体が動かせなくなったら後は頼むからなと念押しされ、『はいはい』と答えてある。ベンもデイジーもいずれは私の元に返ってくる日が来るだろう。父や母が徐々に勝てなくなる年齢という大きなものがある以上・・・
デイジーは父のセラピードッグだ。あの仔にはきっと不思議な力があるんだろう。その役目が終わったらキット私の元に返ってくる運命の子なんだと思っている。実際、実家に行ってからのデイジーは私を避けたりすることも無く、かえってママが好きよ!と表現できるようになり、今では『もううるさいよ!』というくらいしつこく私の顔を嘗め回すようになった。犬連れで出かけられない旅行との時や、お産という重大任務の時には我が家に里帰りしてくるデイジー。
2002年春、4頭の仔をこの世に送り出し、2003年春、5頭の仔を授かった。
デイジーが小さかったころとはまったく違い仔犬たちは奔放で明るく実にフレンドリーな仔達ばかりだ。みんな優しい飼い主さんに嫁いで行った。不思議なもので、最初に生まれた仔のうちの1頭は、同居しているペットが亡くなった折に飼い主さんたちの精神的な助けになったと聞いている。1種のセラピードッグかも?もう1頭の仔は、犬に会いたいばかりに退院を目標に病気と闘って頑張るお父さんに可愛がられているそうだ。これも1種のセラピードッグかも?今年生まれた子犬の1頭は『セラピーエンジェル』と命名し、飼い主さんの大事なお父さんの助けになるだろう。セラピードッグだね。
デイジーが父の助けになったように・・・こういうことも血統かとふと考えてしまう(笑)
それにあの女嫌い・・・それも後でわかったのは長い髪の女の人が嫌いらしい。きっとデイジーは何かトラウマになるようなことがあったに違いない。それは父と暮らすことでいとも簡単に克服できたのだろう。デイジーにとっても父はセラピストだったのかもしれないと人も犬ももちつもたれつなんだなぁといい勉強をさせてもらっている。元気すぎるデイジーは今は我が家に滞在中である。父も母も神経痛が出たらしく、2匹の散歩ができなくてと泣き言を言い出した。いいよねデイジー。。。いつでも帰れるんだもの。。。それに、うちだってまんざらじゃないものね・・・デイジー・・・父の元で暮らしても、やっぱり君はうちの大事な一員なんだ。
これからもよろしくね。デイジー・・・
その後・・・2004年早々。。。
私の両親の体の具合が悪くなってしまい、「ろくなお散歩もしてあげられないから」と
我家に戻ってきたデイジー。
最初こそなかなか自分の順位を確立できなかったけれど、2005年の現在ではすっかりもとの順位に戻って元気一杯である。
本来なら父の元にいるべき犬なのだろうが、
前のように私を(女の人)怖がったりする風もまったくなくなり
穏やかでやさしくフレンドリーな子となった。
たくさんの子犬を産み、たくさんの素敵なオーナーと出逢わせてくれる大事な子である。
デイジーのやさしさが好きだ。
デイジーの繊細さが好きだ。
いつの間にかデイジーはわたしの心の中に入り込んでいるベストパートナーの1頭となっている。