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2009/03/04 Wed

パルボウイルス腸炎

パルボには、『腸炎型』と『心筋炎型』の2つの形があります。
一般に発生し飼い主の方が見舞われるパルボは、『腸炎型』の方が圧倒的に多い物です。
発病すると、わずかに1〜2日で死亡する事の多い恐ろしい病気ですが、ワクチンの接種により予防できるようになりました。
勿論発見が早く適切な処置ができれば、1週間ほどで回復に向かいますが、完治するまでには1ヶ月ほどかかるでしょう。

症状

個体差はありますが、激しい嘔吐があり、24時間以内に、頻繁に下痢が始まりこの下痢は白っぽい物から始まり、ドロドロの粘液状の便になり、血液も混じりドロドロのトマトジュースに似た粘り気のある便となっていきます。

特有に臭いがあり、魚の腐ったような匂いのする下痢である事が多いです。
激しい嘔吐と、下痢の為に脱水症状を起こし、体力の無い子や、腸炎の痛みによってショックを起こす場合もあります。

原因

イヌパルボウィルスが感染する事で起きるウィルス感染症です。
日本では1980年代の始めに大流行し、その当時は『犬ころり』などと呼ばれていました。
主な感染経路として、感染している犬の糞や、嘔吐物それらが触れた食器やタオル、雑巾など、そしてこれらに触れた人間の手足、衣類などですが、このような感染物に、犬が直接口や鼻をつけて感染する経口感染です。

イヌパルボウィルスは、細胞分裂の激しい組織が住み着きやすいので、感染先が腸である事が多いのです。
パルボは、2・3ヶ月をすぎたイヌならどの年齢でも感染する可能性があります。
一番多く感染する可能性のあるのは母親からの免疫の切れる、10週から12週に集中します。
治療が遅れれば嘔吐や下痢が発生してしまうと、1・2日で90%が死亡します。成犬でも25%が死亡する怖い感染症です。

診断

通常パルボに感染すると、血液中の白血球が減少するのでこの検査だけでも診断できますが、まれに時間が立たないと減少しない場合もあることが最近判ってきています。
確定診断をするのに最近では『パルボキット』という抗原検査キットもでき、動物病院で短時間で簡単に調べる事が可能になりました。

検査室がある動物病院ならこの他にも確定するための検査が行なわれる場合もあります。

治療

ウィルス感染なので、隔離して治療にあたります。
このウィルスに効果のある薬は今のところ発見されておらず、点滴や酸素吸入などで脱水やショック状態の回復に努めます。
インターフェロンの投与も良く行なわれます。

体が弱っているので他の感染症を起こさないように二次予防として抗生剤の投与も行なわれます。
こうして3・4日生存できるとあとは回復に向かい1週間程度で殆ど良くなります。
仔犬の場合は体力的な問題などもあり、しばらく点滴等を続ける必要のある場合もあります。

予防

仔犬を迎えたら9週目までに一本目の予防注射を行ないます。
その3〜4週間後に2度目の予防注射を受け、後は年1回の追加接種を毎年行なっていくのが普通の予防方法です。

犬が多く集まる場所に連れ歩くような場合には、できれば4ヶ月頃に追加接種をすることが望ましいでしょう。

通常は母犬の体の中にいる間に抗体を受け継ぎ、初乳による抗体を貰って育った子犬なら、生後70日くらいまで、免疫が切れる事は少ない物です。

母犬が予防注射を摂取していなかったり、生後すぐに母親から引き離されて母乳が飲めなかった場合は注意が必要で予防注射の接種を早める場合が必要になることがあります。

パルボウィルスは非常に丈夫なウィルスで、1年くらいは生きるといわれています。
そして普通の消毒液ではこのウィルスには効果がなく、煮沸消毒か、塩素系ハイターを30倍に薄めて使うと効果があります。

不幸にもこのウィルスに感染した場合は、犬舎やトイレ、糞や嘔吐物で汚染されていると思われるものすべてを完全消毒しなくてはなりません。


獣医さんで『パルボ』と診断されたときに覚えておくと良いこと。。。

通常『パルボ』に感染しているとわかった場合に病院側はほかの患者と同席させることはまずありません。
万が一パルボの犬が来てしまったら病院は真剣に消毒します。
犬が触れたところだけでなく飼い主が触ったり、洋服が触れたようなところまでもです。ウイルスは目に見えないからです。。。

入院させる場合にも『隔離施設』が整っていなければ入院できないことのほうが多いはずです。

『パルボですね』と言われたらまず病院がどうしたかを思い出してください。

子犬が血便を出したり、具合が悪くなると『パルボ』と診断されることが多い気がしますが、本当のパルボなら生存率は限りなく低いでしょうし、だからこそワクチンの必要性を多く語られているのです。

犬のワクチンは感染すると非常に死亡率が高いために作られているからです。

『パルボキット』使用での判断に加え血液検査の白血球の数を調べたうえでの診断は適切だとは思いますが、同居犬がいる場合には、ワクチンの抗体がついているもの以外には『インターフェロン』を打つことで発症を抑えられる可能性が出てきます。

この病気に感染した場合には、家の状況まで獣医さんに相談しないと次々と感染することもあります。

3回のワクチンが入っていないと感染するとも言われています。

たまに『パルボ』ではないのに、『パルボ』だといわれるままに入院させて完治したと思う方もいるようですが、本来『パルボ』は感染して完治すれば『生涯免疫』がつくといわれている病気なのです。

ですから本当にパルボだったらもうパルボのワクチンは必要ないはずです。しかし、抗体がなかったら、ワクチンを打っていなければ確実に感染します。
獣医さんでパルボですと言われて、もし直るような幸運なことがあった後には必ずパルボの抗体があるかどうかの確認をしておくべきです。

万が一誤診でパルボでなかった場合、ワクチンを怠っていたら確実に感染します。獣医さんを信用していないというわけではありませんが、パルボではないのにパルボだという診断を出す獣医さんに何回も遭遇してきたのであえて書き遺しておきます。パルボに感染し直ったといわれたら、必ず抗体検査をしておきましょう。