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2009/04/07 Tue

慢性腎不全・尿毒症

【慢性腎不全】

慢性腎不全とは腎臓の機能が低下し毒素(老廃物)をろ過できなくなることがゆっくりと進行するものです。
急性腎不全後に慢性に移行するものもありますが、多くは老齢による機能不全が多いようです。
先天的に腎臓自体が奇形であった場合にも慢性腎不全になっている場合があります。

【尿毒症】

尿毒症とは腎不全によって有害物質(老廃物)をろ過できないことで体中に毒素が回った状態を言います。

<症状>

腎臓は肝臓と同じく無言の臓器といわれるようにその機能は検査数値で異常を表したときにはかなり進行した状態になっています。

第1期(腎予備能減少期)
無症状。GFR(糸球体濾過値)が正常値から50%減までの減少した時期とされている。

第2期(代償性腎不全期)
GFR(糸球体濾過値)が50%〜30%に低下し、尿濃縮機能の低下が見られ、軽度の高窒素血症、貧血が起きる。

第3期(腎不全期非代償期)
GFR(糸球体濾過値)が30%〜5%に低下し、高窒素血症、腎性貧血が重度となる。また低カルシウム血症、低ナトリウム血症が認められ、夜間尿等もおきる。高リン酸血症も起きる。

第4期(尿毒症期、末期腎不全)
GFR(糸球体濾過値)が5%以下になり尿毒症の症状が出現。


臨床症状の顕著なものとして大量の薄い尿を排出するようになります。
また食事の好き嫌いが多く食べたり食べなかったりすることも多くなります。
まったく食欲がなくなることもあります。
水をよく飲むようになります。
これは尿に水分を取られて脱水を起こすためです。
吐き気が続くこともあります。
胃液のみを吐く場合もありますし、
食事をした後すぐに吐く場合もあります。
食事量が減るためもあるでしょうが体重が減ってきます。

一説にはたんぱく質を好まなくなります。
これは食べると気持ちが悪くなるので
防衛的に避けるのではないかといわれています。

ぐったりしたままやまったく食べない、
歩くときにふらつく、寝てばかりいる様になった場合には
かなり進行し、尿毒症になっていることも考えられます。

<診断>

血液検査でBUN、クレアチニン、リンの値を調べます。またナトリウムとカリウムの数値も調べます。
数値によってどの段階であるかを診断しますが人のようにGFR(糸球体濾過値)を測ることは余りありません。
必要であれば調べることはできます。

<治療>

血液検査で調べた結果の進行度合いにより、輸液、食事療法などを行います。
壊れてしまった腎臓の細胞は復活しません。
つまり残っている機能をどれだけ長持ちさせていくかです。

初期から中期にかけては・・・
胃液の分泌が多くなり吐き気や潰瘍等が起きる場合には胃液の分泌を抑える薬を服用させます
また活性炭状の薬で【クレメジン】を内服させます。この薬は尿毒症物質を吸着させて便とともに排出するためのものです。(中期まではかなり有効)
またリンを吸着させる薬を使うこともあります。
意図的にたんぱく質の制限は行わなくても良い時期です。
皮下点滴も効果があります。

末期腎不全と尿毒症の場合・・・
静脈点滴で、循環血液の量を増やすことで脱水と尿毒症が改善されます。
ある程度症状が改善できるようならば中期のときに準じて同様の対処を続けていきます。

腎性貧血になってしまった場合には【エリスロポエチン】というホルモンを補充します。
これは最初のうちは効果がありますが最終的には効かなくなります。
貧血が進みすぎた場合には輸血も行われます。

点滴の効果が現れないときはすでに終期に入っており、人間の場合には人工透析で命をつなぎます。
犬の場合にも人工透析ができるようになりましたがこの治療を望むか望まないかは飼い主の判断に託されます。

腹膜透析という方法もありますが通常は急性腎不全では効果が高いので選択する場合もありますが慢性の場合にはほとんど使われません。

腎移植という方法は高度医療のひとつです。延命にどれほどが可能であるのか良く調べメリットとリスクを検討したうえで選択するべき方法でしょう。
健全な犬の腎臓をひとつもらわなければできない方法です。

※腎臓を提供してくれた犬に飼い主がいない場合には飼い主になることも必要です。

<サプリメント>

我が家で中期までにかなり効果の高かったものは【トランスファーファクター】とH4Oという水素水でした。
気休めにしかならないかもしれませんが進行はかなり抑えられると感じました。

<予防>

食事管理と健康診断が重要です。人間の食べている塩分の高いものや加工食品などを与えないことです。
また仔犬、老犬ともに冷えることで体に負担が生じ発病することもあるようなので、寒い時期に冷やさないようにすることが大切です。
10歳を過ぎたら排泄のときによく観察し少しでもおかしく感じたら血液検査だけでもするほうがいいでしょう。

<余談>

我が家では13歳の老犬の排尿状態が半年前に先天性腎奇形症による末期腎不全で亡くなった犬の状態に酷似していたことで発見しました。
老齢による機能不全と先天的な奇形から来る腎不全では犬の状態も異なります。

先天性の奇形を持った犬の場合には長期にわたり腎不全の状態を保ってきているためBUNの数値等は高いままでも極端に状態悪化にはなりません。体が慣れているのです。

しかし、機能が衰える前には正常であった犬の場合には早く処置をし、食事の管理などを変えていかないとあっという間に悪化していきます。老齢によって体力もなく復活は芳しくありません。
室温などにも影響されやすいですし、食べたものからも多く影響されます。
治療方法はいろいろありますが苦しい状態を少しでも緩和するもので頑張ってあげてほしいと思います。
犬の腎不全は人と同じで体がだるく、胃は気持ち悪くつらい状況が続いています。
壊れた細胞は再生しないので、慢性腎不全となったら完治する事はありません。

末期に入った場合、尿毒症を緩和するために静脈点滴が最有効です。この時点では犬はあまり動けなくなっているのでおとなしく点滴を受けられるはずですが、多くの場合獣医さんに半日入院等になるやもしれません。
点滴を中止すれば一気に悪化し1週間程度しか持たないことが多いようです。

我が家は最後の日が来るまで点滴をし続けようと考えていましたが、血管が潰れて針が入る状態を超えてしまいました。場所をあちこち変えて脚からも入れました。長期間の点滴で命は長らえましたし、最後は眠るように苦しまずに逝くことができました。

その時の記録はこちらから・・・ミールと腎不全
ジェニーと腎形成不全(先天性腎奇形)

残された日々を苦しみを減らす努力をして、使える時間を大事に暮らしてあげてほしいと願っています。