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2009/03/06 Fri

環境と条件

犬を育てる時に重要になるのが環境です。都会で育つ犬でも多くの環境条件が異なり、地方で育つ場合も同じくです。
仔犬の時代にいかに馴致をうまくやるかは育てる必須条件の一つですが、環境だけはそう簡単に変えられるものではありません。


我が家の場合をいえば、住宅密集地でありながら角地に立つ環境で家の前面と右側は道路に面しています。
隣接している家は裏と左隣のみです。
道路を隔てればすぐに家があります。
道路に面した部分は庭と駐車場になっているので犬たちが外に出れば道路を通る人や車の物音がすぐに聞こえてしまいます。

学校がそばにあるので朝と夕方は学生がわいわいと通る通学路に面し、甲州街道から浜田山(井の頭通り)への抜け道なので車も意外に多く通ります。

家から2分とかからないところに大きな公園があり自然の中での散歩は優雅にできる環境です。
公園を抜けると川沿いの遊歩道に降りることができ、ここは多くの飼い犬たちが散歩コースとして愛用しています。
川沿いの道を抜けて交通量の多い街道を横切ればまた最初の公園よりも大きな公園にたどりつきます。

ここは最初から犬をリードをつなげてあれば入園可能とされて作られた公園なので、近くの公園とは違い多くの犬たちが飼い主とともに散策に来ています。この公園を抜けると井の頭線にぶつかり商店街へ抜けるためにはどこを通っても踏切を渡る必要性があります。
踏切を越えればいきなり商店街です。
店も多く人通りも多いにぎやかな場所です。
それを過ぎると井の頭通り、左に向かえば環状8号線です。
逆コースからは甲州街道と大きな車がスピードを上げて通る道路にもすぐに出ていける環境なわけです。


こうした場所を徐々に抱っこしながらお散歩していき馴らしていける場合と、静かな環境の中でしか歩けないとか、逆にいきなり大通り等に面していて静かな場所から始められないなど馴致に使える環境は大きく違います。

仔犬の時代に抱っこのお散歩が大切ですと伝えてあっても、人通りのない静かな環境しか歩いていない犬や最初からドキドキしたまま地面に降りられる時期が来てしまった犬と、少し筒経験させながら上記の環境を使うことができた犬では予防注射が終わって道路におろしてからの状況が同じなはずはありません。

シャイさがあっても克服した方がよいものを多く伝えられた犬と伝えられていない犬とでは表現も異なります。
仕事を持たれている人の場合にはなおさら夜しか行けなかったりするでしょうし、犬の馴致にかける時間は同じでも環境から学ぶものが違いすぎるのは事実です。
少ない時間の中で馴致と銘打って犬に無理をかけたやり方をすればシャイさが出ていなかった犬でさえどんどんシャイになってしまうことも否めません。


環境が整えられないのは仕方がないのことなので使える時間の中で無理をしない環境を整えることがまず第一だと思います。
我が家では上記の環境がありながら使うことができない状況のことが多いです。
数頭の犬との暮らしではない部分が条件を異ならせます。
ではその時に環境を使わずにどうするかでしょう。


夏のように気象条件が問題になってしまう時期以外はできるだけ人が伴って庭先でいろんな音がしても問題が起きないことを学習させます。

学習させるといってもやっていることは単純で洗濯物を干すために庭先に出ておいでと子犬を呼び出し、音に反応しない犬も一緒につれてでます。
いなければ子犬だけでも構いません。
私はやらなければならない作業を淡々とこなしながら子犬の様子を観察します。
怖がってしまう子は隠れられるような場所に避難するし、気にしていない子はそれなりに遊び始めます。
毎日同じことを繰り返しているうちに庭という環境に慣れ、聞きなれない音だけに反応しても通常聞いたことのある音には反応しなくなってきます。

仔犬の起こす反応が吠えることであった場合のみに吠えたことはたしなめますがそれ以外は自由にしておきます。
玉に呼び掛けてそばにくるように仕向けたり、休憩と称しておやつを食べたりするときに子犬にフードを少し与えたりちょっとしたピクニックを狭い庭で行います。

車がない時には駐車場も開放し遊ばせていきますが、シャッターがトラックの振動等で音が出ても慣れてしまうのです。


2カ月の時には怖がった子も、3カ月にはそんなそぶりは見えなくなります。


車で近くまでしか行かないような場合と子犬を同行して問題ない場合の時は常に一緒に載せて歩きます。
連れ合いの駅までのお迎えや息子を目的地まで送る時や、ちょっとした買い物で子犬を車に残さないで済むようなタイミングを使ってです。

仔犬を連れて車に乗る時に私は抱っこ袋のようなものに子犬を入れて抱いた状態で最初のうちは載せていきます。
仔犬が慣れて抱かれていなくても問題が無くなるまで繰り返していきます。

車に乗ることが苦にならなくなったら後ろの座席から前に来てはいけないことを教え(協力者がいないと難しい)ドライブが好きな子に仕立て上げていきます。


庭はあっても天気が悪ければ使えません。
夏のように気温が高い時や蚊等があまりに多い時期も使えません。
こういうときは涼しくて犬を連れていけて人がいっぱいいるような場所が馴致には最適なので、JマートやSVなどを利用します。

買い物に行くならこっちへ行こうと行く先を通常の場所から変えて連れだせるように配慮するわけです。

こういう場所を利用するときに私はほかの人に子犬を接触させずに行動します。
話しかけられたらもちろん話はしますがあえて子犬を触られないように気をつけています。
ほかの犬に対して吠えられたり吠えてしまった場合にはなだめたりたしなめることはしますが叱りつけることはしません。

ママがいるから大丈夫よと理解させたいのでそれに沿う行動を起こします。仔犬の起こす行動に合わせるのでやり方はさまざまです。
通常ならそんなにかからずに終わる買い物を子犬のためにピクニック気分でぶらぶらと歩き回りできるだけ長く使う工夫をしています。

いくら連れて行ってもすぐにその環境から抜け出てしまっては子犬が理解するには不都合だろうと感じているからです。

エアコンも効いて涼しいしゆっくりのんびり抱っこのお散歩をするわけです。これなら休日しか使えなくても誰にでもできるだろうにと思います。


犬用のカートに載せたり、ほかの人に触ってもらったりするのはずっと先の話で、抱っこの散歩を環境を変えて私の場合には犬同伴OKのJマートでしてみるのです。
通り過ぎる人も、カートに乗った犬も、吠えかかって来る犬も、ママに抱かれている限り自分には問題が起きないんだなと犬が理解出来たあとは徐々に話しかけてくれた人と連れている子犬の状態を見比べて大丈夫だと判断で来て初めて触ってもらうわけです。

シャイな犬になってしまうのはこの工程を簡略化した場合に起こると感じています。
馴らすために無理にほかの人間との接触を強要したり、場所をいろいろ変えてしまったり、飼い主を頼れない状況にしてしまったりすれば、何もかもが怖いシャイな子になるのは当然です。


実際に行動してみればたったひと月くらいの時間なのに、同じ兄弟姉妹であっても、我が家で育てる仔犬と3カ月の時点で既に差ができてくるのは環境の利用の違いだけだろうなと感じています。

最初は小さな差であっても、月日が過ぎていけば大きな差になってしまいます。


環境は作れなくても条件は飼い主が整えることができます。
生まれおちた時からずっとそばにいて体温からにおいから安心できる人間なのだという解釈のある私たちの方が新しく飼い主になった人よりもずっと有利に決まっています。
不利な部分があるのだと知った上で、子犬に無理をかけないで怖がらせない育て方は飼い主にしかできない重要な部分です。

最初の手間を惜しまなかったものがおおらかな犬を作るといっても過言ではないと思っています。