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2009/05/29 Fri

犬のしつけを成功させる手順その2

犬のしつけを成功させる手順その1はこちらから

前回問題行動を直すためには基本からのやり直しが大切ということで、たった一つの約束を作りそれを必ず犬に理解できるように伝え実行することを書いた。第一ステップは、$飼い主の前に出ないようにさせるだけなら、毎日繰り返すことができ、適切に犬への理解を作れるまでに一般的には1週間から2週間もあれば十分過ぎる。コツさえつかめる人ならば一日でも事足りる練習だ。応用編(曲がる・止まるなど)を取り入れながら続けるとしたら第一ステップに一番時間がかかるはずである。


愛犬が自分の顔を声をかければ見上げるようになりあなたの「離れてもいいよという指示」が無い限り、決してあなたの前に出て歩こうとしなくなっていたら(あなたを引っ張って歩いていなければ)第2ステップに移行できる。


第1ステップでは今まで使っていたリードは普通のお散歩用のリードでよかったが(胴輪でも構わない)第2ステップに使うリードはできるだけ軽い素材で犬がつけているかどうかわからないようなものが適切だ。そして長さも多少長めが望ましい。
我が家では最初のステップではショーで使う「パラシュートリード」を使っているので長さを変えるだけでよいのだが、持っていないようなら軽くて細く、できたら3メーター位の丈夫なリードを見つけておくといいだろう。


一般の道路ではすぐには使えないので「第1ステップ」と同じように散歩で歩き、ある程度リラックスさせておく。そして公園のように多少広く人に迷惑のかからないような場所まで行こう。公園に到着したら犬が興奮しないようにいつもどおりに1週くらい散歩してくる。

犬が落ち着いているようならリードを徐々に延ばして垂らしていく。犬と飼い主との距離は「第1ステップ」で学ばせてあれば変わることが無いはずなので、犬と一緒に歩くとリードは長ければ長いほど余分な部分が地面に垂れてしまうはずだ。

手首の部分だけ確実にリードを持って、残りの長さを引きずって歩くように緩める。つまり犬が横にいればリードは地面に下がっており、犬を引っ張っているとか抑えて歩いている感覚はないはずだ。

さて。。。あなたと犬の距離は変わらずに同じままだろうか?犬がどんどん先に歩いて行ったりはしていないだろうか?もし、まっすぐに歩いても犬が付いているようなら右に曲がったり左に曲がったりUターンしたりの応用をしてみよう。

もちろん体ごと曲がる前に犬にどちらに行こうとしているかを伝えなければ犬にはわからないのだからうまくいくはずが無い。必ず右に行くのなら「右」に行くという意思表示の言葉を決めて必ず曲がる前に犬に向かってアプローチしよう。ここは第1ステップの完璧を期すために本来は前段階で応用してあれば問題なくこなせるものだ。

同様に第1ステップの中で十字路や曲がり角で必ず止まるなどの応用も取り入れて教えてあれば尚完璧に近くなっているだろう。

数回繰り返せば犬をリードでコントロールしていないか、実は第一ステップから移行するにはまだ早かったのかが実感できるはずだ。

ひも付きで練習するだけだと、犬をリードワークしているだけなのに課題どおりに歩けているという錯覚を起こしている飼い主はとても多い。リードが短かった時、犬が横を歩いている状態とリードが長くなって地面に垂れたままの状態とが同じだったらOKだ。

これはノーリードでも犬が飼い主の意図を理解し、一緒に歩くときに飼い主のそばを離れる必要が無いと解釈しているという答えになる。「ついて」「一緒に」などの言葉の意味を理解できたとおおよそ考えても構わない。

しかしリードが緩んだ途端、犬が先を歩くようなら理解させられていないと認めよう。

このステップは飼い主が犬をリードでコントロールしているのか犬が飼い主からの命令を理解できているかの確認作業になる。リードを駆使して犬の行動をコントロールできていただけなのか、犬の自由意思で飼い主の横について歩くのだと理解し行動していたのかの差は歴然だ。

つまり長いことで緩めて地面に垂らすリードのおかげで犬の答えが聞こえる。

飼い主は自信を持たなければならないが、その自信をもつ前に、犬が理解したかどうかを必ず確認しなければならない。犬のしつけを行うとき、ここが一番肝心なのだ。飼い主の多くは犬がたまたまできていること、それも誘惑されることなく非常に良い条件のもとでだけであるのに、そこに気がつくことが少ない。そしてなぜかできたという根拠のない自信を持っている。


一つ一つの飼い主から出される言葉の意味を犬が理解できたと確信できるのは大きな誘惑をかけられても動揺することなく行動できた時だ。言葉では簡単だが実際はそう簡単なものではない。

この第二のステップが完了してもまだ「飼い主の横について歩くことを理解している」とは言えない。なぜならまだ誘惑をかけていないから。。。

さぁこのステップを犬に理解させられるのにどのくらいの時間が必要だろうか?それは第一のステップで犬の行動を飼い主が錯覚していなければそう長くかかることはない。

もしもこのステップに入っても犬が前に出てしまったり、かけられた言葉に反応し飼い主の横に戻ってこないようならば、第一のステップに戻って確実に仕上げてからにするべきである。

先走って難しい問題を犬にこなさせるよりも、「公文式」のように犬にとって【非常に簡単な言葉と行動の一致】を確定させて満足させ大いに褒められる経験をさせていくほうが早道だからだ。

リードがあればできて褒められるのならそこにまた戻ろう。リードを完全に垂らしても予想どおりに動くまでに仕上がったら次のステップに入ればいい。

2009/05/28 Thu

犬の躾を成功させる手順その1

ごくたまに「MAGICさんの犬ではないんですが…」と言って「困っているんです」という相談がある。私のアドバイスでよければと聞きに来る人にはできるだけ丁寧に説明している。

それは一人でもシェルティーの愛好家が増えてほしいからであって、自分の産ませた犬を持ったとか持たないとかは関係はない。せっかくの素晴らしい犬種のはずのシェルティーが他の犬種同様にたまたま教え方がうまくいかずに問題行動が出てしまってなかなか直せないことが、犬種的なものと誤解されてしまいたくないからもある。

どんな性質であろうと、かかわり合い方を変えてやることで多くの犬は何かしらの変化をもたらし、人間にとって都合の良い方向へ向かってくる事実があれど、実行できなければ犬自身の生まれつきのことだと決めつけられてしまうのが悲しい。

どんな犬種にもどんな個体にも生まれ持った性質はあるけれど、そこに問題になりそうなものが見えるのならば、増長せずに水面下に押しやっておけばよいだろう。そして目に見える表現によい部分だけを見せられれば犬は幸せな時間が保てるはずだ。

さてたまたま相談が来たワンちゃんはシェルティーとしてはたぶんよくある現象だと思う。

音に反応して大きな車に対して吠えかかるとか、人が来ると吠えつくとか、黙っていてくれれば問題とは思われないことなんだろうなと思うものだ。今までの相談ごとのほとんどがこのパターン。もちろんうちの仔犬を持った人たちの中にだってこういう犬になっちゃったって言うのもあるくらい多い。

家の中だけでならまだしも外でも動く車に対して飛びついて行こうとするとか走っている人を追いかけていくなんかもまぁ同じような問題行動だ。確かに内容を聞けばやめさせたい気持ちはよく分かる。

でも、まず最初に知っておかなければならないことは問題だと思われる行動をやめさせられないことが重要なのではなく、日々の暮らしの中で飼い主の言うことをどんな場面でも聞いているかどうかを確認し、聞いていないことを受け入れることが必要なのだ。

要するにこういう問題行動とされるものを犬が起こしているときに飼い主はひたすら「通じない禁止言葉」を連呼しているだけにとどまっていて、毎回その時が過ぎているだけで行動を止めていないことに気がついていない。
もとより・・・「連呼した禁止言葉」があくまでも飼い主が禁止しているつもりなだけで、犬には一向に伝わっていないというのが本当だろう。なかには一瞬は止まるのですがって言うのも結構ある(笑)

犬に伝わっていなければ何をやっても無駄だということを知ろう。

ヒトは犬が一瞬でも行動を止めると「言葉を理解している」と錯覚を起こすのかもしれない。でもこの場合犬が吠えるのを一瞬止めたとしても、すぐまた吠えてしまうのは言葉を理解していて禁止されたことがわかったからではなく、吠えている途中に気になる音や動きがあったために自発的に犬自身がやりたいことを止めたにすぎない。

ゆえに飼い主が禁止言葉を連呼しなかなか犬の行動を止められないという現象について、犬からの答えは「意味がわかりません」もしくは「聞く耳なし」「自分へのアプローチだとは思わない」というものなわけだ。だから、毎回同じことを繰り返しているにもかかわらず行動は一向に改善しないままとなる。

この事実を飼い主が受け入れないとパターンはいつまでも繰り返されるわけだ。

犬からの答えを聞くのが一番大切と話す背景は、事実を受け入れないと先に進めないからである。

犬からの答えが「飼い主の言っていることの意味が理解できません」というものであるのなら何をするのが最短の早道になるか考えてみよう。

日ごろの生活パターンはいつもどおりでいいから、ひとつだけ犬に対して、「これだけは守ってもらいますよ」という規約を作る。一番簡単なものは「シーザーミラン」も応用しているお散歩での付き合いのルールだと思う。誰しも毎日お散歩に行くことが当たり前だと思っているだろうから、一番使いやすい方法なので。。。

犬を外に連れ出すとき、人の横について歩かせるということを基本に考える。でも横につかせるといっても今までが今までなだけにそう簡単に事が運ぶはずもないだろう。だから、犬を横につかせるのではなく、「飼い主の前に出さない」を徹底すればよい。

最初は言葉をかけようがおやつで釣ろうがおもちゃを見せようが飼い主がやりやすいものを使って大いに結構なのだが、重要なことは「歩かせなくてはならない」という意味ではないことを知っておくとよい。

「飼い主の前に出さない」ということは「歩かなくてはならない」を含まない。

つまり犬がどうしても前に出てしまうのであれば飼い主自身は歩くのをやめて立ち止まらなくてはならない。もしくは犬の動きを無視して逆方向へあるくということでもよい。私は犬に対して「そっちにはいかないよ」と声をかけてあげ、即座に踵を返すという方法を使っている。

最初こそ、急に立ち止まることで犬は「ぐえ!」っとなることもあるが犬は自分が苦しいことは嫌だし、言葉をかけられればたいていそちらに気が動くので何回かの繰り返しの中で飼い主の意図を理解し始める。その上に飼い主から発せられる言葉を聞いていないと変なことが起きると理解してくれるのだ。

どんなことを犬に理解させるにしても、ほとんどの場合行動と同時に言葉かけのタイミングが重要になる。言葉をかけて行動を起こす、または言葉をかけながら行動するの、どちらかでなければならない。

ここで多くの人がしくじる原因は行動を起こしてから言葉をかけていると言う凡ミスがほとんどである。ごく稀に犬がパニクってしまい行動も精神状態も正常でないままの場合もあるのでこの時に限り何をやっても意味はない。一度冷静に落ち着かせてからでないとことは始められないのだから。

言葉をかけてから行動を伴わせる、もしくは言葉をかけながら行動を伴わせるのどちらかのタイミングが合うようになれば犬は即座に反応するようになる。つまり飼い主の横についていつ飼い主から言葉がかかるかを気にしつつ前を向いて歩くようになるのだ。

肝心なことはこのパターンができるようになっても犬の期待にこたえるためにも、よく行動できていると感じたら必ず「肯定」の言葉かけをすることが望ましい。教え始めのときは歩き続ける中言葉もずっとかけ続けたほうが効果は絶大だが、散歩しながら犬にずっと声をかけ続けることは不可能に違いないので徐々に言葉かけは少なくしていけばいい。でも…全く褒めなくなってしまうことは犬からの期待にこたえていないのだと覚えておくべきだと思う。

まず一つ目はここがスタートだ。このスタートに使うものはどんな行動でも構わないが、大人になった犬に「人間から出される言葉の意味」を理解させるために必要な条件は「確実に・ひとつづつ・行動と言葉を一致させる」を犬に覚えなおしてもらうということに尽きる。

問題行動は犬が飼い主の要求がなんであるかを理解し、その要求に従おうという気持ちがなければ直らない。直せないというよりも治らないといったほうが正しいだろう。

飼い主は問題行動が起きた途端にその問題行動自体をやめさせようと躍起になるが、基本を理解させなければ何をやったところでその場限りにしかでき上がらずいつしか元に戻ってしまうのだ。即効性のあるものなど犬のしつけには存在しない。それは犬が人と同じ生き物であることを受け止めればわかるはずだ。

犬のしつけは人間の子供の教育と全く同じである。人の子供の教育には即効性のあるものはない。毎日毎日繰り返される子供自身が自然に受け入れられるものから学んでいて、ひとつづつ積み上げていく積木と同じだ。

積み上げる積木をただ置いただけならちょっとした衝撃でたやすく崩れてしまうだろう。でも設計図を作り、土台を固めながらひとつづつ積み上げるごとにボンドで固めていったら最後に大きな城が完成する。
出来上がるまでの労力はたんに積み上げるだけに比べたら多くの時間を伴い忍耐も必要だと思う。でも何回も崩してまた積み上げてを繰り返すくらいならゆっくりじっくりひとつづつ完成させていったほうが逆に楽だと考えてた私流の教え方だ。

手間暇がかかるけれど、この労力を惜しまなかったとき1歳よりは2歳、2歳よりは3歳というように時間の経過とともに大きな結果が返ってくる。犬の寿命は人間の5分の1から7分の1に等しい。ヒトの子供を教育して育てる時間よりもずっと短い時間しかないわけだ。でも彼らは人の子供のように大人になって親が必要なくなることはない生き物だ。体は大人になっていても、老化現象が起きるほどの年齢にまでなっていなければ修復はいくらでもできる。

どんな犬でもひとつづつ確実に理解させていくことを怠らなければ良い家庭犬にできるのだから、まずは問題行動自体を直そうと躍起にならずに怠っていた基本的な第一歩を確実にクリアすることから始めるのが犬の「しつけ」を成功させる最短の早道だ。

次は「人の前に出なくなった・ひとの横をついて歩ける」の第一段階の後へ続く。。。
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